
新型コロナウイルス軽症者受け入れ施設でのWhiz活用レポート
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で世の中は一変しました。全国的にもまだ感染者が出ており、気の抜けない状況が続いています。
東京都は、新型コロナウイルス感染症の陽性患者のうち、入院治療が必要ない軽症や無症状の方を受け入れる宿泊療養施設を安全で快適にするため、新たに開設する施設に試験的にロボットを導入し、入居時のお出迎えや清掃作業をさせる取り組みを進めています。我々ソフトバンクロボティクス株式会社は、この取り組みに全面的に賛同し、人型ロボット「Pepper」とAI清掃ロボット「Whiz」を提供しています。
私は今回、受け入れ施設の1つである「the b 八王子」に訪問しました。現在の施設の状況・Whizの利用方法などを交えて現場をレポートします。
1階のレッドゾーンにWhizとPepper
なぜ軽症者受け入れ施設にWhizが導入されたのでしょうか?その理由の1つは自律走行という特長です。
Whizはあらかじめルートを決めておくことで、スイッチを押すだけでそのルートを再現して自動で走行し、ルート上の床を清掃します。この特長により、人が長時間滞在できないレッドゾーンでも床清掃を行うことができ、清潔な床を保つことができます。
the b 八王子では、1階ロビーがレッドゾーンに指定されています。レッドゾーンに指定されたエリアは、感染拡大を防ぐため防護服を着用せずに立ち入ることができません。この写真も、グリーンゾーンつまり防護服なしで入れるエリアから撮影しました。
入所された方々に少しでも癒しをご提供するため、ロビーにはPepperもいます。この施設でしか聞けないオリジナルのセリフを話します。Pepperを見つけると立ち止まったり話しかけたり、気にされる方が多いそうです。
最前線の感染対策
1階ロビーの中でも、レッドゾーンとグリーンゾーンは仕切りで区切られています。もともとあったわけではなく、受け入れ施設として決まった段階で作成されたそうです。
先ほどのロビーの写真はここから撮影しました。
レッドゾーンへの立ち入りには防護服を着用しなくてはいけません。当初は顔をゴーグルで防護していたのですが、使い捨てのほうが安全であるという専門家からのアドバイスで、紙製のフェイスシールドに変えたそうです。着用にはおよそ2分。それだけの手間をかけて徹底的に防護する必要があります。
レッドゾーンを清掃するWhiz
レッドゾーンにおけるゴミの運用は、まず各部屋で出たゴミを1階ロビーの所定の位置に、入所者自ら出してもらいます。その場所に溜まってくると、外に出しやすい場所(これもレッドゾーン内)に移動させます。そして週に3回、溜まったゴミをレッドゾーンから外に出して、専門の業者に回収していただきます。Whizは、この外にゴミを出すタイミングで稼働されます。
奥にWhizのスタート&ゴールとなるHLC(ホームロケーションコード)が設置されています。
Whizは奥からスタートし、入口手前までを清掃し、また奥に戻っていきます。ちょうど運び出している時間中に清掃が完了するよう、ルートが設定されています。
Whizは複数のセンサーによって人の動きを検知し、一時停止します。稼働している最中にゴミ出しで前を横切っても、人と接触することはありません。
入口は区切られて2つの通路になっています。向かって右側が入所者用通路、左側がゴミ出し用通路です。徹底的にゾーンが分けられています。
外側でさらに二重に袋詰めを行い、厳重に回収されます。レッドゾーン内から運び出す方、外で袋詰めにする方が必要なので、人手がかかっています。
対コロナの最前線
スタッフ用のスペースには、壁一面にさまざまな資料が貼られていました。プリントアウトした感染対策の方法や手書きの注意書き、新聞のコピーなど…。いかに急な対応が迫られていたかがよくわかる光景でした。
この施設では、5月から軽症者の受け入れを開始しました。本日お話を伺った東京都職員の方は、4月半ばに異動になり、1週間で施設を選定し、その後1週間でゾーニングなど運用を決めたそうです。
あの状況の中、それがいかに大変だったかは想像に難くありません。取材当時でも毎日、入所者つまり陽性の軽症者がいらっしゃる状況が続いていました。現場を目の当たりにして私もより一層、早期終息に向けて自分にできることをしなくてはいけないという気持ちが強くなりました。
おまけ
予備のPepperが廊下で充電されていました。「いなくなってしまうと寂しい」とはご担当者談。少しでも現場の皆さまのお力になれていたら何よりです。
著者プロフィール
岡田 亮
ソフトバンクロボティクス プロジェクト推進本部
AI清掃ロボット「Whiz」事業開発部所属。2020年2月にソフトバンクロボティクスに参画し、現職に。前職は旅行ガイドブックの編集者として図書制作や営業企画に従事。その経歴を活かして、現在は導入事例の取材や記事制作を担当している。