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清掃ロボットの歴史概観~2016年3月号特集「業務用清掃ロボットの現在地」から~

皆さんは、「清掃ロボット」というと、何を思い浮かべますか?

一般家庭であれば、アイロボット社の「ルンバ」。業務用であれば、テレビCMの広瀬ウィズでお馴染みの「Whiz」などでしょうか。

それでは、清掃ロボットはいつごろ開発が始まったと思いますか?

10年前?20年前?

諸説ありますが、1978年だそうです。いまから40年以上前のこと──。

実は、長い歴史があるのです。

今回、『ビルクリーニング』編集部がお伝えするのは、この清掃ロボットについてです。

アフターコロナの施設清掃を見据えると、一定作業の自動化は不可欠です。単純作業をロボットに、難しい作業を人に。このような清掃オペレーションを確立することで、作業の効率化が進み、品質の向上も期待できると思います。

ということで、いきなり「だから清掃ロボットは必要なんだ!」という
記事を書くつもりはありません。そうではなくて、その思いは、清掃業界に携わる先人から受け継がれてきた。そのことを、知っていただきたいと思います。

まずは、2016年3月号の月刊『ビルクリーニング』の特集「業務用清掃ロボットの現在地-人と協働するロボットたち-」に掲載した次の記事をご覧ください。

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清掃ロボットのあんなこと・こんなこと①:清掃ロボット開発から40年~本誌が伝えたロボットたち~

日本の清掃ロボットの開発は意外と古く、1970年代から始まった。

『全国ビルメンテナンス協会20年史』(1986年刊)のコラムによれば、1978年に掃く・拭く・吸うの3機能を持ちランダム走行するロボットを、当時ベンチャー企業のオートマックス社が開発。83年には、マイコン制御で清掃範囲を記憶させて移動する2号機を発表した。

同時期、ビルメン企業の日本ビルサービスは2ブラシ・2バキューム・2モップを装備した「NBS・CR-1」を発表。85年には東芝と三井不動産が共同開発で壁面からの距離を認識しながら自走し、集塵・つや出し・洗浄の3機能を有した「オート・スウィーピー・AS100」を開発した。

NBS・CR-1

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オート・スウィーピー・AS100

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こうした時代背景のなか、大阪ビルメンテナンス協会『20年誌』は「未来」をテーマに記事を構成。情報化社会が進展するなかでビルメンテナンス業はどうあるべきかをさまざまな角度から検証。「未来が見えますか」という座談会では人と清掃ロボットの共生や人材育成、高齢化社会への対応などについて議論が掘り下げられている。

本誌がロボットについて特集を組んだのは1994年8月号。「清掃ロボットが動き出す」と題し、清掃ロボットの歴史と、当時完成したばかりの羽田空港ターミナルビル(通称、ビッグバード)における清掃ロボット導入の検証記事のほか、次の実用機を掲載した。

富士重工「ロボハイターAV-31/AV-71」

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日本輸送機「AWBA7-00」

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靜甲「SEIKO自律走行無人清掃車・洗浄車」

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三洋電機「CR-55」

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松下電器産業「掃除ロボット」

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神鋼電機「神鋼無人清掃ロボット」

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ケント社「ROBOKENT」

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ウインザー社「Robo Scrub」

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※このうち何点かは羽田空港でフィールドテストを実施

このほかペンギンワックスの全自動ワックスコーティングロボット「オールウエイ・マフィックス・トレーサー」(1997年10月号)、住友商事と富士重工業のエレベーター連動清掃ロボットシステム「RFS1」(2002年3月号)、フィグラ「エフロボクリーン」(2012年3月号)についてお伝えした。

オールウエイ・マフィックス・トレーサー

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本誌の創刊は1988年。清掃業務も標準的作業を決めて科学的に管理しようという志向が高まった時代だ。折しも、バブル期の人手不足問題が深刻化するなかで、標準化・効率化を推進できるものとして、清掃ロボットへの期待も大きかったものと思われる。

デフレ経済から脱却と少子高齢化により、人手不足問題が深刻化するなかで、清掃ロボットの活用は、単に人の作業の代行という視点だけでなく、品質とコストのバランスなど、現代的な課題からの視点も不可欠だと思われる。

この特集ではさらに、清掃ロボットに関する矢野経済研究所のレポートの概要を紹介しました。

現在のように清掃ロボットが実用化され、定着したのはここ5年ほどのことですが、当時の状況をうかがい知ることができますし、2020年の市場規模を予想していますので、現状とつけ比べてみるとおもしろい分析ができるかもしれません。

清掃ロボットのあんなこと・こんなこと②:2020年に年間 1,850台規模に~「業務用掃除ロボット市場に関する調査結果 2014」から~ 矢野経済研究所

矢野経済研究所は2014年8~10月、清掃ロボットメーカーなどに対して市場調査を実施。11月に調査結果を発表するとともに、概要をホームページに掲載した。同社の了解を得て転載させていただく。

1. 市場背景と概況

業務用掃除ロボットが対象とする市場は、現状人手による作業が中心で、総じて作業効率は低く、作業環境もよくない。現状では、安価な労働力に依存する部分が大きい分、少子高齢化が進めば労働力そのものの確保が難しくなるのは否めない。業務用掃除ロボットは、その人手に代わる手段として有効となるのは間違いない。

業務用掃除ロボット全体では、掃除能力(性能)とコストメリットの明確化が共通して求められる。人と同等以上の作業内容と人以上の効率性に加え、現場での使いやすさも重要となる。また、用途や場所に応じて作業ニーズが多様化しており、それに個別に対応することで製品の品揃えも増え、市場規模も拡大していくと考える。

2013年度までは参入企業も製品数も少なく、現状においても品揃えが出揃いつつあるレベルで、市場構築に向けてそのスタートラインに立ったに過ぎない。まずは、今ある製品を確実に市場に普及することが求められる。

2014年度に入って、業務用掃除ロボットは、新規市場参入もしくは新規参入を表明する企業が相次ぎ、市場が活性化する様相を呈している。但し、2014年度の国内業務用掃除ロボット市場規模(メーカー出荷数量ベース)は875台の見込みであり、市場としては未だ小さなレベルでしかない。

2. 注目すべき動向 ~タイプ別のロボット市場動向~

現在、製品として外販されている業務用掃除ロボットの用途は、床面やプール、太陽光パネル、煙突・焼却炉壁、業務用エアコンなどの清掃や掃除、洗浄を目的としている。

床面掃除ロボットは、新規市場参入が相次ぎ、最も活性化している市場である。2014年度に製品が出揃うことで、作業対象や掃除内容に応じたメーカー各社の営業提案が期待でき、2015年度以降には本格的な需要開拓が進むと予測する。

太陽光パネル掃除ロボットは、2014年度から新規参入が見られ、公共・産業向けの太陽光発電所での本格的な需要開拓が進む。その一方で、FITの見直しが検討されており、発電所新設減によるマイナス要因もある。

煙突・焼却炉壁掃除ロボットは、製品化されているものの近年の出荷実績はない。製品価格が高く、使用頻度やユーザーが限定されるため、新たな需要開拓が難しい。

プール掃除ロボットは、すでに導入すべき施設には導入されているのが実状で、現状の機能のままでは新たな需要開拓は難しい。買い替え需要に依存しているが、製品への新しい機能付加による需要開拓の可能性もある。

業務用エアコン掃除ロボットは、近年、出荷が見られない。現在、製品改良を進めており、新機種による需要開拓が期待される。ロボットによる掃除効果に注目する大手チェーン企業で採用になれば一気に需要が拡大する可能性がある。

3. 将来予測

業務用掃除ロボットは、人の作業の代替ができる反面、人の仕事を奪う側面がある。コストダウンの手段になるが、使い方によってはコストアップする可能性もある。

人以上の掃除効果が付加価値として認められれば、コストアップも受け入れられるが、まだそこまでの評価は得ていない。

ユーザー企業側にロボット使用の経験が少ない分、現場ごとの作業条件や制約に応じたロボットの使い方を、メーカー側から如何に提案できるかどうかで効果も弊害も生まれてくる。

2015年度以降は、国内の経済状況に大きく左右されると考える。

ただ、国によるサービスロボット開発促進策や2020年の東京オリンピック開催に向けてサービスロボットのニーズが高まり、業務用掃除ロボットも数量、金額ともに前年度対比で2桁増を続けていくと予測する。

決して大きな市場規模は期待できないが、堅調な製品の拡大や用途の広がりもあり、将来に向けた可能性は存在する。2020年度の国内業務用掃除ロボット市場規模(メーカー出荷数量ベース)は1,850台になると予測する。

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■資料名:「2014 業務用掃除ロボットの可能性と将来性」
■発刊日:2014年10月30日
■体裁:A4判 126頁
■定価:150,000円(税別)

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この企画を立案した背景には、前年の2015年に日本政府が「ロボット新戦略」を策定したことがきっかけです。介護や医療、農業、サービス業に至るさまざまな分野で、ロボット技術の開発・導入を推し進め、当然ながらビルメンテナンス業にもその目が向けられました。

同号では、床面清掃用が3機種、その他の用途としてガラス、エアコン、プールなどの清掃に使用できるものを紹介しました。

振り返れば、このころが業務用清掃ロボットの大きな転換期であったと思います。

著者プロフィール

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月刊『ビルクリーニング』編集部
株式会社クリーンシステム科学研究所

http://www.cleansys.co.jp/

1988年7月、ビル清掃業界で唯一の専門雑誌『ビルクリーニング』。毎月、実際の清掃現場を取材し、「清掃スタッフのための技術情報マガジン」として現場情報や使用資機材紹介、スタッフ教育に欠かせない危険予知訓練、現場責任者を育成するマネジメント講座など、他にも清掃業界の最新トピックスを発信中!

近年は、オフィスビルなどを中心に導入が進んでいる清掃ロボットやICT・IoTを活用した事例も追い、業務の省力化・効率化についての記事掲載も行っている。

今回執筆:編集チーフ 比地岡 貴世
二十歳から編集プロダクションで雑誌制作の下請け業務をこなし、2015年4月にクリーンシステム科学研究所に入社。当時は、清掃業の経験や知識などは皆無だったが、この5年間で100以上のビルメンテナンス企業、クリーンクルー、清掃現場を取材し、月刊『ビルクリーニング』制作の実務を担当。
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新型コロナにより施設清掃はガラリと変わり、アフターコロナ時代には全く異なるレベルで施設の清潔さが求められるのではないだろうか。世界中の施設が「清掃のニュー・ノーマル=新しい清掃標準」を模索している。「アフターコロナの施設清掃」に向け、世界の事例、専門家の科学的考察を紹介していく。