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清掃業務に関する新型コロナウイルス感染症流行の影響調査

今年の5月29日、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言のなか、生活インフラを支えたエッセンシャルワーカーに敬意と感謝を示すために、「ブルーインパルス」が東京上空をフライトしました。

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今回のコロナ騒動で「エッセンシャルワーカー」(不可欠な労働者)の存在が際立ちました。医療従事者はもちろん、配達員、運輸業者、生活必需品を取り扱う小売業のスタッフ、清掃員など、彼らの活躍があったからこそ、私たちの生活が成り立っていました。

月刊『ビルクリーニング』は、清掃員のための雑誌媒体です。コロナ禍で活躍した清掃員たちが、どのような生活を送っていたのか、何を感じていたのか、そして、経営への影響はあったのか、このあたりの実態を調査すべく、「清掃業務に関する新型コロナウイルス感染症流行の影響調査」を実施しました。

今回は、その実態調査の結果を紹介していきたいと思います。

調査概要

■調査方法
①クリーンシステム科学研究所が運営するビルクリーニング・オンラインに回答フォームを掲載
②クリーンシステム科学研究所が運営するビルメンブックセンターに登録しているお客様へメールマガジンで通達
③SNS(ツイッター、インスタグラム)での情報拡散
④業界関連サイト(掃除のつぼ、Builpoなど)を通じた情報発信

■回答方法
携帯端末とパソコンの両方に対応した「Googleフォーム」により、無記名方式で実施。

■調査期間
2020年5月11日(月)~31日(日)

■回答数
457件

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アンケート実施当時のメイン画面

Q1:あなたの属性・勤務先についてお尋ねします。(回答数:457件)

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現場作業は女性が中心の清掃業界ですが、本社勤務をされている管理者層は圧倒的に男性が多いため、アンケート結果からもわかるように、男性からの回答率が多くを占めました。

Q2a:経営者・管理職(課長以上)の方にお聞きします。(回答数:320件)

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82%が「経営に悪い影響があった」と回答し、「売上減少」「業務の縮小・延期・中止要請」などの結果が突出していることがわかりました。とはいえ、前年の同時期と比較すると、売上は微減程度となっていて、今後のビルオーナーとの契約更新の際にどのような影響が出るのか、そこがポイントかもしれません。

Q2b:一般社員・現場作業員の方にお聞きします。(回答数:137件)

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当時の世相を表すかのように、「マスクなどの衛生保護具が不足している」が51.8%。また、エッセンシャルワーカーとはいえ、施設によっては休業要請の影響から「自宅待機になっている」との回答も目立ちました(24.1%)。

Q3:消毒・除菌作業についてお聞きします。(回答数:457件)

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Q3a:「依頼があり実施した」と回答した企業にお尋ねします。(回答数:169件)

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結果から見るに、オーナー・施設管理者側からの要請を受けて、消毒・除菌作業について実施したことが想像できます。「ウィズコロナ」「アフターコロナ」のなかで、こうした作業をどこまで徹底し、ビルメンテナンス企業が実行していくのか、今後の動向が気になるところです。

Q3b:「依頼はあるが断っている」「別の企業に委託した」と回答された企業にお聞きします。(回答数:129件)

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適切な消毒・除菌作業を実施するためには、研修が欠かせません。清掃業は、座学と実技の両面を追わなければなりませんので、正しい知識を習得する機会と情報を共有する場が求められているのかもしれません。

以下は、自由回答となった設問内容と回答数です。

Q4:今回のコロナ感染問題について、行政や所属企業に対して要望や質問を自由にお書きください。(回答数:199件)

Q5:新型コロナウイルス関連で心に残るエピソードがあればご記入ください。(回答数:139件)

Q6:今後、コロナ感染問題に対して清掃業界や企業はどうあるべきか、何をすべきか自由にお書きください。(回答数:247件)

各設問や回答内容についての考察は、月刊『ビルクリーニング』7月号で紹介していますが、ほんの一部の意見をご紹介させていただきます。

緊急事態宣言の発令によって、「#自粛警察」がSNS上で話題を呼んでいました。正義感が曲解し、「正しい!」という絶対的な理念のもと、行動が過激化していました。実際に、自由意見のなかにも似たような話がありました。

清掃業者がとあるチェーン店の定期清掃に入ったところ、「コロナの消毒だ!」という噂が駆け巡り、「あの店で感染者が出たんだ」というありもしない話が膨らみ、店舗の利用者が激減したという意見がありました。
また、新型コロナウイルスによって志村けんさんが亡くなったというニュースは、メディアでも大きく取り上げられました。この影響は、清掃業にも及んだようです。志村けんさんと同世代(70歳代)の方が多く活躍する清掃業。家族からの反対もあったのでしょう、高齢スタッフの退職が相次いだという声もありました。人手不足で頭を悩ます清掃業にとって、今後、大きな課題を抱えることになりました。

施設清掃のニュー・ノーマルとは?

コロナ禍によって、施設の運用も変わりました。

私ごとですが、先日、デパート内のあるショップに足を運んだところ、入場規制がかけられていました。3か所あった出入口は1か所に集約され、まず入るためにはショップの外側にソーシャルディスタンで並びます。出入口には、アルコール消毒剤とカウンタ(数取器)を持った店員さんを配置。退出した人数をカウントし、退出した分だけ並んだ人たちから入場させます。
デパート内の1区画のショップですと、「入場規制5人まで」と明記しているところもありました。

従来のように、「ウィンドウショッピング」を気軽に、自由に楽しむという機会は減るのかもしれません。

オフィスビルは、テレワーク化が継続していけば人が往来する機会が減り、従来よりも汚れにくくなります。

清掃業は、こうした事態にどう対応していくのでしょうか。

目に見えないほこり、化学物質、菌やウイルスなどから生命を衛り、衛生管理や感染制御としての役割を担っていくべきなのでしょうか。

私たちの価値観は確かに変わっています。

今後、清掃業も変わっていくはずです。

その動向を追いながら、『ビルクリーニング』誌と本noteで絶えず情報を発信していきます。

最後に、ご多忙のなか、多くの方にアンケートの回答をいただきました。この場を借りて、御礼申し上げます。

清掃業者の皆様が、毎日、あるいは定期的に各所の清掃を行なっていることで、施設がきれいで、清潔に維持されています。

感染リスクのある仕事に誇りと責任を持って対応されている清掃業の皆様、そして、その他のエッセンシャルワーカーの皆様に、感謝を申し上げます。

著者プロフィール

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月刊『ビルクリーニング』編集部
株式会社クリーンシステム科学研究所

http://www.cleansys.co.jp/

1988年7月、ビル清掃業界で唯一の専門雑誌『ビルクリーニング』。毎月、実際の清掃現場を取材し、「清掃スタッフのための技術情報マガジン」として現場情報や使用資機材紹介、スタッフ教育に欠かせない危険予知訓練、現場責任者を育成するマネジメント講座など、他にも清掃業界の最新トピックスを発信中!

近年は、オフィスビルなどを中心に導入が進んでいる清掃ロボットやICT・IoTを活用した事例も追い、業務の省力化・効率化についての記事掲載も行っている。

今回執筆:編集チーフ 比地岡 貴世
二十歳から編集プロダクションで雑誌制作の下請け業務をこなし、2015年4月にクリーンシステム科学研究所に入社。当時は、清掃業の経験や知識などは皆無だったが、この5年間で100以上のビルメンテナンス企業、クリーンクルー、清掃現場を取材し、月刊『ビルクリーニング』制作の実務を担当。
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新型コロナにより施設清掃はガラリと変わり、アフターコロナ時代には全く異なるレベルで施設の清潔さが求められるのではないだろうか。世界中の施設が「清掃のニュー・ノーマル=新しい清掃標準」を模索している。「アフターコロナの施設清掃」に向け、世界の事例、専門家の科学的考察を紹介していく。