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清掃のプロが集う展示会で見つけたトレンドとは?~「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO2020」レポート~

お久しぶりです、月刊『ビルクリーニング』編集部の比地岡です。

突然ですが、この記事を読んでいる皆さんは「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO2020」という日本最大のビルメンテナンス業界に特化した展示会をご存知ですか?

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コロナ禍で当初の予定より規模を縮小して開催されたが、
3日間の来場登録者数は7,048名と盛況を見せた

この前の記事で、ソフトバンクロボティクス株式会社 常務執行役員 Chief Business Officer 吉田 健一 氏が「アフターコロナのビルメン経営に求められるもの~科学的アプローチと清掃ロボットとのハイブリッド清掃に向けて~」の講演を行ったという記事がありましたよね?

その際に、「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO2020」の名前が挙がっていました。

実は当社、クリーンシステム科学研究所はこの展示会に出展し、月刊ビルクリーニング編集部に至っては3日間、展示会取材を行っていました。

業界の最先端となる用具、ケミカル、機械などが勢揃いでしたので、この場を借りてレポートさせていただきます。

今年のテーマは「感染症対策」と「生産性向上」

ビルメンテナンス業界の展示会では、毎年、「人手不足解消」や「誰でも簡単に作業ができる」などのキーワードをいたるところで目にします。どの業界も人手が不足していると思いますが、清掃業は特に深刻です。高齢者や外国人、障がい者なども活躍していますが、それでも人手は足りません。

そのため、入ってきた人でも現場の即戦力となるように、使用する資機材の簡易化が進み、誰でも簡単に作業できる優れた資機材が業界には揃っています。

ただ、今年は「感染症対策」や「生産性向上」などの言葉が目立ちました。
「感染症対策」はおわかりいただけるかと思いますが、「生産性向上」がなぜ注目を集めているかわかりますか?

それは、私たちの生活スタイルの変化に答えがあります。

新しい生活様式の実践から、各施設には感染対策のガイドラインが存在しています。デパートに行ったり、飲食店に行ったりすると、手指消毒が当たり前になりましたよね。なかには、検温を行うところも珍しくありません。

人々の衛生に関する意識は強まり、昨年であればあまり気にしなかったことも、今年になって過敏になることがいくつかあります。

例えば、

電車の手すりは触りますか?
エスカレーターのベルトはつかみますか?
押して開閉するドアがあったら、手すりをつかんで開けますか?

安全な施設運営を行うためには、皆さんが普段、触るところ(でも触れたくないところ)を清潔に保つことが重要となります。

いま、施設管理を担うビルメンテナンス企業が頭を悩ませているのが、この高頻度接触面の除菌・除ウイルス作業なのです。

単に、除菌剤を使えばいいという訳ではなく、基本的に洗浄作業を行ってから、除菌・除ウイルス作業となります。ともすれば、いままで1ステップでよかったところが、2ステップになり、さらには使用するケミカルも異なるため、作業工数が増えています。

冒頭で紹介した吉田氏の講演のなかで、「ロボットと人との協業」という題目で、ロボットと人で最適配置を考える、ハイブリッド清掃の提案が行われていたかと思います。

吉田氏の話では、清掃作業は主に、

・トイレ掃除30%
・ゴミ回収40%
・床清掃30%

という作業の内訳となっており、このなかでロボットに任せられる範囲は、床清掃の30%。もちろん、すべての作業を自動化するのは難しいため、この30%の負担をどれだけロボットがこなしてくれるのか──。

ひいてはそれが、作業者の負担を軽減することにつながり、立面清掃に注力できるという内容でした。

今回の展示会は、吉田氏が考察する通りだと感じました。これをもっと大きな視点で捉えると、一つひとつの作業を見直し、どこに無駄があり、何をすれば改善できるのか。

施設の使用方法も従来とはまったく違います。オフィスビルでは、このテレワークの普及や輪番制出勤の採用、対面での打ち合わせ回数の減少によって、ビルの利用頻度が下がっていると考えられます。

そうした世の中の動きも踏まえると、果たして清掃作業は従来通り隅から隅まで満遍なく行うことが正解なのでしょうか。

しかも、洗浄後は仕上げ作業の工程まで増えているのですから、負担は増すばかりです。作業方法を見直さない限り、現場は疲弊していき、人材の定着率にも悪影響が出るのではないでしょうか。

清掃機械の大半がコードレスに!

それでは、展示会で目立っていた商品は何なのか。個人的には「コードレスマシン」が業界の主流になりつつあるかなと感じました。

皆さんのご家庭では、掃除機はコードレスですか?それとも、ロボット掃除機なんていう人もいるかもしれません。

余談ですが、当社は業務用コードレス型アップライトバキュームを使用しています!

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トルネード社の「ROAM13」を
輸入販売元の株式会社ソニカルさんから購入した

業務用の掃除機では、まだまだコード式が一般的です。コード式のメリットは、パワーが優れていることと、安いということです。1台買ってしまえば、消耗品は紙パックくらいですから、それも根強い理由の一つかもしれません。

バッテリー式のコードレスであれば、コードを抜き差しする無駄を省くことができ、かつ施設利用者がコードを踏まない、引っかかる心配もないということで、作業者もストレスフリーで業務にとりかかれるというのが最大の利点かもしれません。

唯一の欠点は、稼働時間に制限があることでしょうか。以前、コードレス掃除機の取材を行ったときに、清掃控え室を見させていただきました。すると、部屋の隅には充電中のバッテリーが数多く置いてあり、現場の方は、「なるべく充電バッテリーを少なくしたい」「バッテリーを使うのであれば共通のもので使いまわしたい」という、運用面でシンプルにしてほしいという意見が挙げられていました。

そういった課題に向き合い、1種類のバッテリーで掃除機、ガム取りマシン、小型の自動床洗浄機など、複数のマシンを動かすことができる、「バッテリーの共通化」の提案を行っているメーカーもありました。

清掃の仕様変更、それに伴う使用資機材の見直しを図るようになれば、コードレスマシンの採用はもちろん、バッテリーの共通化によって清掃機械をそろえる、そういった流れになるかもしれません。

生産性向上は、単に新しい清掃資機材を導入するだけでは実現できません。
現場が日々抱える問題をクリアにし、なぜその資機材を採用するのか細部まで考え、新しい清掃オペレーションにすることで実現するものだと思います。

当然、一人あたりの生産性向上が図れれば、他の業務、例えば、立面の除菌・除ウイルス作業にも注力できます。
日常清掃の機械化を実現させ、さらに安全なかたちで運用していくためには、コードレスが欠かせません。

今年の展示会取材では、そういったメッセージを感じ取ることができました。

著者プロフィール

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月刊『ビルクリーニング』編集部
株式会社クリーンシステム科学研究所

http://www.cleansys.co.jp/

1988年7月、ビル清掃業界で唯一の専門雑誌『ビルクリーニング』。毎月、実際の清掃現場を取材し、「清掃スタッフのための技術情報マガジン」として現場情報や使用資機材紹介、スタッフ教育に欠かせない危険予知訓練、現場責任者を育成するマネジメント講座など、他にも清掃業界の最新トピックスを発信中!

近年は、オフィスビルなどを中心に導入が進んでいる清掃ロボットやICT・IoTを活用した事例も追い、業務の省力化・効率化についての記事掲載も行っている。

今回執筆:編集チーフ 比地岡 貴世
二十歳から編集プロダクションで雑誌制作の下請け業務をこなし、2015年4月にクリーンシステム科学研究所に入社。当時は、清掃業の経験や知識などは皆無だったが、この5年間で100以上のビルメンテナンス企業、クリーンクルー、清掃現場を取材し、月刊『ビルクリーニング』制作の実務を担当。
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新型コロナにより施設清掃はガラリと変わり、アフターコロナ時代には全く異なるレベルで施設の清潔さが求められるのではないだろうか。世界中の施設が「清掃のニュー・ノーマル=新しい清掃標準」を模索している。「アフターコロナの施設清掃」に向け、世界の事例、専門家の科学的考察を紹介していく。