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職場にロボットがやって来る~おもしろく、ためになるロボット小史~(後編)

・ロボットの語源は無賃労働
・ロボットが続々登場!
・工場ラインに欠かせない産業用ロボットの誕生

といった内容でお届けしました前回に続き、ロボット小史後編をお届けします。

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身の回りで活躍するロボット

ロボットの多くは産業用ロボット。しかも、自動車産業と電機産業の二業種がそのうちの3分の2を占めてきた。

自動車工場のロボットと言えば、大型自動工作機械、自動プレス機械など「自動機械」と言われるロボットや無人搬送システム。この自動機械とは、新幹線の安全操縦システム、電話の無人交換、銀行の自動キャッシュ支払い機、自動券売機などがあり、言わばロボットの脳(ICや超LSIといった電子頭脳)が、私たちの身の回りで静かに、そして着実に活躍してくれている。

では、自動機械ではない、文字どおりのロボットはどんなところに進出、あるいは求められているのか――。

まず危険な仕事。原子力用、宇宙開発用、海洋開発用、そして防災用(特に石油精製ブラントや炭坑の火災などの)ロボットがその典型である。窓拭き用や建設用ロボット、また農薬散布用ロボットもこの部類に入る。

単純作業や人の嫌がる仕事もロボットの活躍の場。工場における単純・単調作業、パン製造業における深夜作業。ひとたび母港を離れると200日間ぐらいは家族や社会から離れてくらなければならない遠洋漁業でもロボットの活躍が待たれている。

その他、高齢化によって低下する筋力、視力、聴力、持久力を補うもの、身体障害者や寝たきりの老人の介助をする福祉ロボットなども、これからの高齢化社会を見据えて研究開発が進められている。

部屋の掃除、窓拭き、アイロンがけなどのできる家庭用ロボットも、いつの日か家庭で使われているかもしれない。

清掃ロボットが登場する

清掃ロボットの最初の歴史は、「窓拭きロボット」である。マンモスビルの窓拭きは極めて危険な作業であり、人手に比べるとプライバシーを侵害する心配もなく、何よりも機械化・ロボット化が容易だったと考えられる。

三菱電機株式会社がアメリカの会社と提携して、新宿住友ビルに「自動窓拭き装置」を納入したのだが1974(昭和49)年のこと。他社も次々と開発、製品化していったが、1990年代前後では、株式会社ビル代行(現在のグローブシップ株式会社)と株式会社エム・エンジニアリングで共同開発した壁面清掃ロボットを、パリのルーブル美術館が、ガラスピラミッドの清掃用に購入したと話題をまいた。これは清掃分野においても、日本のロボットの水準が高いことを実証した例と言えそうだ。

それでは、床面清掃ロボットはどうなのか。

発端とも言うべき委員会が1976(昭和51)年に財団法人機械振興協会に設置されている。東京工業大学の森政弘博士や工業技術院の尾崎省太郎氏など日本のロボット工学専門家に混じって、田中定二氏(清掃業界の理論的礎を築いた人)も清掃専門家として参加、ここではなかなり具体的な開発計画が立てられたそうだ。

この後、清掃ロボット開発は本格化し、自動制御応用機器メーカーであるオートマックス社や、ビルメン側からも日本ビルサービス株式会社、続いて日本の大手電機メーカーである株式会社東芝などが、それぞれの実績を生かすかたちで清掃ロボットの研究、開発、製品化に名乗りを挙げるようになった。

言わずもがな、窓拭きロボットも床面清掃ロボットも、人間の姿というでもなく、人間の腕の形をしているわけでもない。しかしながら、人間が足を使って移動し、手で清掃作業をする代わりにセンサーやマイコンが働いている。これこそが「清掃ロボット」なのである。

ロボットとの共存をめぐって

ロボットは疲れることもないから休憩してたばこを一服することもない。食事もしなければ、トイレに行くこともない。誰かのことを想って作業の手を休めることもない。換気装置がない環境下でも、また照明なしでも作業ができる。なおかつ、ロボットは定着率がいい! ときている。

今後、ロボットの高性能化、小型化、低コスト化もますます進むであろう。

それと同時に、これまでロボットの実用化にばかり向けられてきた科学者の目も、ロボットと同じ場で働く人間に与える影響、働く人の立場などへも向けられるようになってきた。

ロボット学者である長谷川幸男氏が、『ロボットと社会』(岩波書店、1985年)のなかで述べている「ロボットの新原則」のうち、次の2つは特に印象深い。

第2条:ロボットは人間が自ら行うことを欲する仕事を人間から奪ってはならない
第3条:ロボットは人間に心理的、肉体的に圧迫を与えるような形態や仕様のもとにつくられてはならない


人類の歴史の長さからすると、ロボットの歴史などほんの閃光にしかすぎない。しかしこの小史はロボットという言葉、そして実体が、今後加速度的に進化してゆくことを予感させてくれる。

清掃現場がこれからますます機械化されていくとき、その延長上には、職場の助っ人としてロボットを迎え入れる日が遠からぬうちにやってくる。

あなたの仕事の充実感、楽しさを奪うものであってもならない。扱いに苦慮するような厄介な代物でもないはずだ。ロボットは単調な作業、苦痛を伴うような仕事、危険な作業、非衛生的な仕事を何のためいらいもなく、黙々と、あなたの代わりにこなしてくれることだろう。

憂うべきはむしろ、チャペックが電車の中で垣間見た情景、つまり人間が人間らしく生きていないという、私たちの現在の状況のほうにどうやらあるようだ。

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いかがでしたでしょうか。

ロボットの歴史 現代編、といった内容の記事も今後予定しておりますので、お楽しみに!

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著者プロフィール

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月刊『ビルクリーニング』編集部
株式会社クリーンシステム科学研究所

http://www.cleansys.co.jp/

1988年7月、ビル清掃業界で唯一の専門雑誌『ビルクリーニング』。毎月、実際の清掃現場を取材し、「清掃スタッフのための技術情報マガジン」として現場情報や使用資機材紹介、スタッフ教育に欠かせない危険予知訓練、現場責任者を育成するマネジメント講座など、他にも清掃業界の最新トピックスを発信中!

近年は、オフィスビルなどを中心に導入が進んでいる清掃ロボットやICT・IoTを活用した事例も追い、業務の省力化・効率化についての記事掲載も行っている。

今回執筆:編集チーフ 比地岡 貴世
二十歳から編集プロダクションで雑誌制作の下請け業務をこなし、2015年4月にクリーンシステム科学研究所に入社。当時は、清掃業の経験や知識などは皆無だったが、この5年間で100以上のビルメンテナンス企業、クリーンクルー、清掃現場を取材し、月刊『ビルクリーニング』制作の実務を担当。
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